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地域密着型なお店

2010年03月26日 08:51

For PRK



桜の花びら舞う今頃になると、少しの甘酸っぱさと少しの苦味が胸につまって淡い恋心を思い出す。
まだボクが大学生だった頃、近くのコンビニでバイトをしていた。
ただの普通のコンビニ、それ以下でもそれ以上でもないただの普通のお話。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

『あっ、やった』

ふぁさーっと店内に白塵が舞うその時間、21時半。
いつも決まってこの時間にやってくるOL風の女性が通路を通る際にひっかけた小麦粉が床に散乱した。
急いでモップを持ち出したボクは、オタオタとキョドっている彼女に『大丈夫ですか?』と声をかけた。


『スミマセンッ!私、ぼーっとしてて!本当にごめんなさい、あの、これ、弁償します』

しきりに謝る彼女の鼻の頭は小麦粉で白く化粧づいていた。
正直に言おう。ボクはこの人を知っている。
いつも決まった時間に現れる客を、客が思っている以上に店員は覚えているもんだ。さらに、その人が美人であればなおさらだろう?
だからボクは会話ができるこのチャンスを店長には悪いが実は喜んでいたんだ。


「あー、いいですよ。気にしないで。破損で返品かけちゃうんで。それより服大丈夫です?」


精一杯の笑顔で答えたつもり。
恐縮しすぎてちょっと涙目になっていたその顔がホッと安堵で緩む。
掃除をしている間も彼女は散々謝って、終わるとやっぱり謝って帰っていった。


「またお越しくださいね」


破けた小麦粉の袋を事務所に持っていき、店長に事情を説明すると『破損で返品かけちゃおう』と言って机の下の箱にそれを入れた。



次の日、いつものようにレジをうっていると、『こんばんわ』と声をかけられた。
顔をあげると彼女が笑顔で立っていた。
来づらくなってもう来ないかなー美人だったのになーと少し残念がってた矢先だったので少し驚いた。


『昨日はどうもご迷惑をおかけしました。それで、これお礼に』


と、小さな青い紙袋を差し出す。


「いや、ほんと結構です。かえって悪いですよ」


結局、たいしたものじゃないからと言う彼女に押し切られ、それを受け取った。
事務所で包みをあけるとかわいらしいクッキーが入っていた。
さすがかわいい彼女はかわいいものを選ぶと一人納得し、ついついニヤニヤしながらつまんでいると、パートのおばさんが気味悪そうにボクを見ていた。

そんなちょっとした日常のハプニングなんて毎日起こるものじゃない。
それから平凡な何も起きない毎日を過ごした。
普通に大学に行き、普通に授業を受け、普通に友達と笑いあい、普通にバイトをした。
そうこうしているうちに完全に春を迎え、寒くない夜がやってきた。

いつものようにバイトを終え、珍しく廃棄となったいちごタピオカのドリンクを貰って外でタバコをくわえた。
もうすぐ夏になるんだなぁ、そう思いつつも決まった相手がいるわけでもなく、予定もない事がやけに寂しく感じた。


『あれ、キミ?』

振り返ると彼女がいた。

『久しぶりじゃない?元気だった?』


彼女はちょっと酔っ払っているらしく、やけにフレンドリーな雰囲気だった。
小走りに駆け寄ってきて、ボクの隣に腰掛ける。
久しぶりに会う彼女は少し髪を切って大人っぽくなっていた。

「髪切ったんですか?」

『いつの話よ、切ったの随分前よ』

「あ、そうなんですか。いや、久しぶりだし・・・」

『そーいえばそーか、ごめんごめん』


彼女の酔いもあって、ボク達はまるで友達かのようにいろんな事を話した。
勤め先は四谷にある会社で事務をやっている事、歳はボクより一つ上な事、近所はこの近くである事、最近は帰りが遅くなってコンビニにはあまり寄らなくなった事。
主に彼女が自分の事をしゃべり、ボクは相槌をうってばかりだった。
そのうち彼女はパタと話さなくなりだんまりと自分の指先を見つめた。
急に黙った彼女を不思議に思いうつむいたその顔を覗き込んだ。
眼にためた涙が見つめた指先へとポタリと一滴こぼれた。


「え、ちょっと、どうしたんですか?なんかボク悪いこといいました??」

あわてて声を発するボク。

『私ね、今日彼氏と別れたんだ。結構長く付き合ってたんだけどな、、最近会えないことが多かったから、、、』

いきなりの重たい話に声を失うボク。


『どうしてかなー、仕事が忙しいと思って、邪魔しちゃいけないと思って、連絡したいのも我慢して、でもお前はオレのこと好きじゃないんだろう?とか言われちゃって、好きに決まってんじゃない!好きだから連絡しないで我慢してたんじゃない!』

叫ぶように言った彼女の涙はもう滴どころではなかった。
声を震わせ肩も震わせて泣き出す彼女。
意味深にいやらしい笑顔を浮かべた若い男性がボクらを眺めながらコンビニに入っていった。

若干の気まずさが流れる。
ボクは何と言ったらいいものか逡巡し、

「それ彼氏にちゃんと言いました?」

と聞いた。
「そんな彼氏別れて正解だっ!ボクと付き合いましょう!」と抱きしめれるほどの甲斐性をあいにく持ち合わせてなく、こともあろうかうまくいく為のアドヴァイスをしてしまう。

「それだけ好きならば、その気持ちをちゃんと言わないと伝わらないですよ。相手はわかってるだろう、だなんて結構男は気づかないもんですよ」

敵に塩を送るとはこのことだ。
千載一遇のチャンスを棒に振り、ボクは一体ドンだけいい人になりたいのだろう。

「これ飲んで落ち着いてください、廃棄だけど」

いちごタピオカまで贈ってしまった。


『もう一度よく話してみるね』

そう赤い眼でにっこり微笑んで彼女は帰って行った。


次の日、あいもかわらずバイトに入り、事務所でパソコンを打っている店長の横でシフトをチェックしていると、ダンボールの中の小麦粉が眼に入った。

「あれ?店長、その小麦粉まだ送ってないんですか?」

『あぁ~忘れてた~。まぁ忘れるよな。結局さ、こういうのっていつまでも残っちゃうんだよな。まぁ、昔の女みたいなもんさ。忘れようと思っても忘れられないっていうの?』

「何言ってんすか?頭おかしいんじゃないですか?それ小麦粉ですよ。早く送れよ」


そんなことを言い合ってると、『すみませーん』と客に呼ばれた。
急いでレジに出ると、例の彼女が立っていた。

『あ、昨日はありがとう。ちゃんと話をしたら彼も分かってくれて、、へへ』

嬉しそうに笑う彼女の顔をみて、少しのジェラシー。

『でね、今、彼と一緒なんだ』

外を見ると、背の高い男性がタバコをふかしていた。

「もしかしてあれ?」

『そう、あれ。ふふ』

あぁ。もやもや。
うまくいってよかったよ。あぁ、よかったよ。だが、しかし!しかしぃ!!
彼女はそんなボクの葛藤なぞそ知らぬ顔で、パタパタとドリンクを持ってきて、『これもください』と言った。

『で、これは昨日のお礼。廃棄じゃないぞ』

そういっていちごタピオカをくれた。
仲良く腕を組んで歩いていく二人を嫉妬と羨望の眼差しで見ていると、店長が事務所から出てきて言った。

『なに?失恋??』

「そんなんじゃないです。そんなんじゃないですけど、、、外に塩撒いていいですか?」


『ねぇーよ、塩なんて。あぁ、小麦粉ならあるぞ?』

忘れられない、か。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ひらひらと舞い落ちる桜を見ると、これからも毎年思い出すんだろうな。
思いっきり撒いた小麦粉は、月の光の中キラキラと反射して地面に白く積もった。

もう春なのにな。心は冬景色。
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コメント

  1. 沼尾 | URL | -

    病み上がりの心に染み渡りなんなら涙をにじませながら読み
    そして敵に塩を送るってとこでニヤつき
    店長に向かって“早く送れよ”に声を出し笑い
    読み終わった後切なさと温かさが交じり合ったなんとも穏やかな気持ちになったってのに
    なんだこの最初の場違いなコメントは。
    一気にげんなりだ。
    いまいましぃっ!

    りゅぢ氏、そろそろどっかに投稿しましょう。

  2. りゅぢ | URL | -

    〉沼尾さん

    場違いなコメントは消しましたぜ。

    ふむ、よかつた。笑っていただけて。
    次回はキミの大好きな怖い話にしますね。必死で考えて身の毛もよだつやついきますっ!がんばりまつ!


    投稿ね、まぁそう言ってくれんのはキミだけだ。さんくす。

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