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ときめき麺々丸(アイツ)はラーメンの精?:溢れたから書く話

2010年03月02日 14:06

For KSG ver.2



「うそつけ」

ラーメンを食べながら俺はそう言った。

『いやいやほんとですって。なんでうそだって言い切れるんですか?ほんとに美味しいラーメンにはラーメンの精が宿るんですって』

軽くあしらう俺にコスゲはムキになって主張した。

『その店には毎日ラーメンの精が通いつめてくれて、売り上げに貢献してくれるんです。例えばあそこに男の人がいるじゃないですか?あの人、いつもいるじゃないですか?あの人こそラーメンの精に間違いないんじゃないですか?』

そういって指差した先には、おっさんが独りラーメンを啜っていた。
確かに良く見かける顔ではあるが、どこからどうみてもただのおっさん、それ以外に考えられる選択肢はない。

「おまえなぁ、ある日突然知らないヤツに“あなたはラーメンの精だ”って言われる人の気持ちになって考えてみろよ。悪口じゃねぇの?それ。ほとんど辻斬りじゃん」

『あぁ~あの人があの有名な麺々丸さんだったんですね~』

「なに?麺々丸って?」

『ラーメンの精の名前です』

「全国区?」

『いえ、今付けました』


頑なにただのおっさんを麺々丸だと主張するコスゲに押されて、食べ終わってでていくおっさんの後をつけることになった。
何の因果か、どんだけの暇人か、ただのおっさんの後をつける物好きがどこにいる?ここにいた。
あのおっさんが本当にラーメンの精だったとしても、それがどうした?得るものは皆無であると言える。

『ちょっと、もっと隠密行動心がけてくださいよ。バレたら飛んで行っちゃうじゃないですか?そうしたら後をつけることはもうできないんですよ?もしかしたら二度とあの店には現れないかもしれない。あの店潰れるなぁーかわいそうだなー。その時になってあの時もっと隠密行動してればって思っても遅いんですからね!』

「なにそれ?座敷わらし的な?飛んでいったのなら、それでおっさんが麺々丸であるという証明になるんじゃないか?むしろバレた方が手っ取り早い気がする」

『あぁ~分かってないなぁ。こういうのは段取りが大事なんですって。なんで分かんないかなぁ、分かんないだろうなぁ』

格下を見るような目つきで残念そうな顔をするコスゲ。
バカにされたようで俺もムキになって身を隠す。
そんな俺たちの争いなぞ全く気づいていない様子で麺々丸は歩いていく。

『ほら、急いで!』


しばらく歩いて行くと、麺々丸はラーメン屋に入っていった。

「なぁ、さっき食ったばかりだよな?あの人またラーメン屋に入って行ったぞ?」

『ラーメンの精なんだから当たり前じゃないですか?ほら行きますよ』

「なんで!?外で待ってればよくね?」

『おかしーでしょ、外で待ってるなんて。それに麺々丸が何食べるか興味がわくじゃないですか!?むしろ』

コスゲは渋々する俺を引きずって暖簾をくぐった。
狭い店内には客がまばらに座っており、一番隅っこに麺々丸は座っていた。
迷わずラーメンの食券を買うコスゲ、俺はメンマだけでいいかなと思ってると強引にチャーシュー麺のボタンを押された。

『ラーメン屋に入って、メンマだけのヤツなんていませんから』

何で今日二杯目のラーメンがチャーシュー麺なんて、重量級なんだよ。そう思いながら、麺々丸が良く見える席に座り食券を差し出した。
チラチラと観察する俺たち。
湯気が立ち込める狭いラーメン屋で、麺々丸はうまそうにラーメンを啜った。

「なぁ、ただの大食いのおっさんじゃねぇの?それもすこぶるラーメン好きの」

『すこぶるラーメン好きでもハシゴします?そんなヤツもいないですって』

「ラーメンの精もいねぇだろ」

出てきたラーメンは美味しかった。
美味しかったがいかんせん、先ほど食べたばかり。お腹の具合が妊婦さんだ。
なんとか完食すると、麺々丸がちょうど出て行くところだった。
再び俺たちは後をつける。
夕暮れ時となり、黄昏の空の下、こそこそとおっさんを尾行している俺たち。
なにしてんだろー、もういいんじゃねぇかなー。

「なぁ、もういいんじゃ・・・」

そういいかけた時、麺々丸が暖簾をくぐって行くのが見えた。
もちろんその暖簾には【ラーメン】と書かれていた。

『さすがラーメンの精!仕事熱心ですね』

「仕事じゃねぇだろ、、、え、もしかして、、、、俺らも?」

『もちろん!』

そして本日三杯目のラーメンを食べた。
我侭に付き合ってもらってるから、とコスゲが奢ってくれたが、それはチャーシュー麺大盛りだった。
また重量級!?それも超!!それ嫌がらせじゃないの??いや、絶対嫌がらせでしょ!?

『私のラーメンが食べれない?食べれないというんですか?あぁそう。食べれないんだ~ふーん』

泣きながら食べた。
もうあのおっさん、自分で名乗ってくれないかな?はじめまして麺々丸ですくらい言ってくれないかな??

『一日に三杯もラーメン。期待が高まりますね。ついにラーメンの精を発見してしまったようですね』

「俺たちも三杯食べたけど?そしたら、俺らもどっちかといえば、ラーメンの精よりなんじゃないの?それにお前らラーメンだけど、俺、チャーシューだぞ?俺が麺々丸じゃねぇの?」


そんなこんなで麺々丸の尾行は続いた。
信じられない事にその後さらに三杯、全部で六杯もラーメンを食べる羽目になった。
いい加減、見ただけで吐きそうだ。
いや、見なくても十分に吐ける。
ハンター×ハンターでいえば、具現化すらできる。
そう思った時、麺々丸に新たな動きが起きた。

『あ、帰るみたいです』

お腹をさすって歩くその姿に、先ほどまでの物色するような素振りが見えず、足は一方を向いて進んでいるように思える。
商店街を抜けて、神社がある方角へと歩いていく。
家に帰るのかと思いきや、途中にある屋台のラーメン屋の椅子に座った。

「な、七杯目!?」

仕方なしに俺たちも麺々丸の隣に座った。
人のよさそうな店主がラーメンを出して『おっ、はじめてみる顔だね、お二人さん。じゃぁこれはおまけだよ』とチャーシューを乗せてきた。
うっと息を詰まらせる俺にばれないようにこっそりとそのチャーシューを俺の器に移すコスゲ。
そんなコスゲを無言で睨むが、何食わぬ顔でラーメンを啜っていた。
その横で店主は麺々丸に話しかけだした。

『あんた最近良く来るね。不思議なんだけどさ、あんたが来るようになって客が増えたんだよ。あんた、俺にとっちゃ座敷わらしみたいなもんさ。ははっ、俺が勝手に思ってるだけだがね』


そういえば、今食べてきたラーメンはどれもうまいものばかりだった。
最初の方に入ったラーメン屋こそ、客は少なかったがそれは時間が早かったせいだろう。
後の方のはどれも満員であったと記憶している。
店内には雑誌の切り抜きや、テレビ画面をチャプターしたものなどが貼られていて、最近ピックアップされている事が伺えた。
一日に七杯もラーメンを食べる?
もしかして、、もしかしてホントにこの人、、、、

気づくと神社の中へと入っていく麺々丸の後ろ姿が見えた。
俺とコスゲは急いでお金を払い後を追う。
どんどん奥へと入っていく後姿。
良く晴れた日だったが、いつの間にやら空は雲に覆われて星が見えない。
街灯がジジジッと音を立てた。

何個目の鳥居をくぐったころだろうか?前を歩く麺々丸の姿が消えていた。
背筋に冷や汗が流れ、ぞくっとするような冷たい空気があたりをおおう。

『あの人、ほんとにラーメンの精だったのかな?』

そうコスゲが呟くように言った。
ちょうど思ってた事を言われ、なんとなく認めづらくて慌てて否定する。

「んなわけないって。そんなのいるわけないじゃん、、か」


沈黙。

沈黙に耐えられなくなってあたりを見回した俺の目に、外を歩く麺々丸の姿が見えた。

「おい、あそこにいるぞ!あれ麺々丸じゃね!?」

慌ててコスゲの手をひっぱり走り出す。
先ほどと変わらぬ速度で缶コーヒーを飲みながら麺々丸は歩いていた。
そして、とある家の前で止まるとインターホンを押して、ただいまーと言った。
あたりの暗闇を突き破り扉から明かりが漏れ、その中に麺々丸は消えていった。

表札を見ると、【山本】とかかれており、俺はコスゲに聞いた。


「麺々丸ってさ、本名は山本麺々丸って言うの?」

『あ、、、いや、、、あの人は、、山本さんでしょう・・・それもラーメンがすこぶる大好きな・・・』

「山本さん、だよね、、、」


しょんぼりした気持ちで帰り道を歩く。
ただのおっさんはやはりただのおっさんだった。しかもなんつーかただの山本さん。
七杯もラーメンを食べてラーメン嫌いになった。
得るものは何もなかったのだ。というか、失った。たくさんのものを失った。
そんな事を思ってると、突然コスゲが笑い出した。


『ふふーん、何を隠そうか、、じ・つ・わ、私が麺々丸だったのだ』


「うそつけ」
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コメント

  1. 麺々丸 | URL | -

    いいっ、実にいい!もっと文字数増やしたらさらに楽しい冒険活劇になりそー!

  2. まりな | URL | -

    関係ないけど、わたしラーメンマンに似てるってゆわれたことあります!

  3. naoto. | URL | -

    りゅぢ氏、
    面白かったですよー!

    りゅぢ氏って意外とハンター×ハンター読んでたんだーと
    思ったし、ガースーが頭に浮かぶほど、ガースーの
    言葉が如実に再現されててすごく面白かったー!

    『私が麺々丸だったのだ』とか言いそー。

    ところで、りゅぢ氏。
    全然関係ないんですけど、マリーナって
    ラーメンマンに似てないですか?

  4. りゅぢ | URL | -

    >麺々丸

    挿絵はお前に任せる!!麺々丸に任せるっ!

  5. りゅぢ | URL | -

    >まりな

    『!』をつけちゃうほど勢い良く言う事??
    割とラーメンマンを肯定的に捕らえてるようだけど、それ悪口だから。
    髪をクイッてしてそうなところが似てるのかなぁ。。

  6. りゅぢ | URL | -

    >naoto.

    万遍なく内容に触るとは、全部読んでることアピール??w

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