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トンネルを抜けると

2009年12月22日 14:26

千と千尋的な。





柔らかい光に誘われて店に入る。

太陽が沈んでから幾分たつというのに止まない暑さに辟易した為、アイスコーヒーを所望する。
出てきたコーヒーは熱いホットコーヒー。
グラスの下、1,2センチにわずかに溜まる黒い液体に大粒の氷を入れて溶かして水増し。
コンデスミルクを注ぎこんでよく混ぜれば出来上がり。

ねっとりとまとわり付く空気に甘いあまいベトナムコーヒーがよく合う。
まろやかな甘さとひんやりと冷たいコーヒーが全身に染み渡り人心地付いた頃、辺りを見まわした。
賑やかに、それでいてうるさくなくほどよい喧騒がクリアな視界とともに入ってくる。



気づいたら自分の名前を思い出せなくなっていた。
あれ?俺の名前は竜だったか?
いや、そんなかっこいい名前じゃなかったな。

士か?いや、氏?詩?死?

どれもしっくりこなくて、いっそ痔だったか?


『俺は痔だ!!』

そう叫んでみると、周りの人が残念そうな視線を向けてきた。
もう一度叫んでみる。
しばらくすると白衣の男達が現れて有無を言わさず私を連れ去った。
どこに行くのか?そう尋ねると、その質問には答えずに名前はと聞いてきた。
『痔だ』という。
『いや、だから名前は?』
『痔だ』
『はい、痔ね。だから名前は?』

どうにも話が通じない男達だ。
何度も何度も痔だといい続けると、肩をすくめて見合す男達。
白いA4ほどの紙になにやら書き込み、にっこりと『治りますよ』と言った。

『何を言ってるんだ!俺はどこも悪くない。俺を誰だと思ってる。俺は痔だ!』
『はい、治るからね。恥かしくなんかないですよ』

そう言ってとりあってくれない。
男が書いた紙を密かに覗き込んでみる。
そこには『○○病院』と書かれていた。
果たしてそこは総合病院か、精神病院か。

たどり着いた病院で出迎えた医者が白衣の男に尋ねた。

『それで患者は?』
『痔だそうです』

なんだ、分かってるじゃないか。そうだ俺は痔だ。

『いや、名前だよ名前。いきなり痔とか言わなくていいから』
『だから痔なんですって』
『キミ、そう痔、痔と言わなくても分かったから。名前を聞いてるんだ』
『痔です』

人の名前を何度も聞き返すとはあきれた医者だ。
一度耳鼻科にでも行く事をお勧めする。
『先生、俺が痔です』
そう言ってみたが医者は渋い顔するばかり。

医者と白衣の男が言い争っているうちに、なんで私はこんなところに来てるのだろうと思った。
どこも悪くない、悪くないのに何故医者にかかるのか。
『痔だ』『名前だ』と彼らが言い争ってるうちにこっそりと逃げる事にした。
忍び足でその場を離れ、暗闇にまぎれると一目散で走った。
駆け出すとすぐに後ろの方で大声が聞こえてきた。


『痔が逃げたぞーー!!』

もうバレてしまったか!

はっ!私の名前は痔ではない!
そうだ、私の名前は竜痔だった!!

竜痔。

すごい痔だ。違う、すごい字だ。
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