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よし、帰るぞと父は言う

2012年04月04日 02:19

『帰ろう』、父は言った。



結果として命に別状があるような問題でもなかったのだが、先日母が入院した。
痛みで動けないくらいグンニャリしてしまったので救急車を呼んで運ばれて行った。
付き添いに父が付き、『ひと段落したら連絡するから』と言い救急車は病院に向かっていった。
その後なんどか現場中継のような電話が父から入り、その度に『また何かあったら連絡する』と言い残し父は電話を切った。
こういうとなんだかマメな父親のような感じがするが、それは偉大なる勘違いであり現場中継の電話は主に必要ないものだ。

『おそらく盲腸のようなものかと思う』
とか
『腎盂という女性特有の病気があるらしい』
など、病気を特定するような事を何度も伝えてくるが、これはあくまで父の見解であり医者の見解ではない。なので、まったくいらない情報だ。
その後、医者から出された原因は盲腸でも腎盂でもなかったので、ほんと大ハズレ。
いったん落ち着いた所で父は自力で病院から家に戻り、姉がうちにやってきて、再度家族で病院に向かった。
病室のベッドにはぐったりと力ない母親が寝ていた。
『大丈夫?』と聞くと「うん」と弱々しく答えた。
姉はTPOが分からない人なので、電車内で携帯電話している人なみにでかい声で『何か必要なものがあったら言ってね』と10回くらい聞いている。母はその度に『ない、いらないよ』と苦しそうに答えている。
そうして父は言った。

『よし、帰ろう。じゃぁ、母さんまた明日。りゅぢ、帰るぞ』


わずかに5分もその場にいず、父は病室を後にした。
えーもう帰るの!?と驚きつつも、父はどんどん行ってしまうのでしかたない。
『じゃぁ、ごめん、母さんまたね』と後を追う。
姉も唖然としながらも母に別れの挨拶をする。

『何か必要なものあったら言ってね』と、また言った。


次に日、悪くなる前に手術を急遽してしまおうという医者の判断で手術をすることになった。
父と一緒に病院に行き、母と顔を合わせる。
相変わらず苦しそうにしているが、昨日よりはよさそうだ。
どこぞかに行っていた父が病室に戻ってきて言った。

『医者から説明があるらしい。りゅぢ行くぞ』

そう言った父に母は言った。『サンダル買ってきて』
救急車に乗ったときは確かにあったサンダルが、今は何故かなくなってしまい歩くに歩けないと。
下のコンビニで買ってくると父は言い、医者の話を聞きに一緒に受け付けまで降りていった。
受付に行くと、診察室の前でお待ちくださいと言われ、ベンチに座って待つ。
座るや否や父は言った。

『サンダルを買ってきてくれ』

えーーー!医者の説明これから聞くのに!?
説明終わってからじゃダメなんだろうか?
そうは思えど父は自分の思い通りにいかないと逆ギレというか意味分かんないギレをしてしまう末っ子なんで、言うことを聞かざるを得ない。なんでキレるんだろうね、意味分かんない。
しかしだ、父は自分の思っているとおりに人の話を曲解してしまう悪癖を持つので、彼のバイアスのかかっていない医者の見解を聞きたい。故に急いでサンダルを買ってきて戻る。
なんとか間に合い、『こうこうこういう事情ですので、今日急遽手術しますね』と医者に説明してもらい病室に戻った。

病室に戻って母に『今日手術らしいね、がんばってね』と言うと、父が言った。


『よし、りゅぢ。帰っていいぞ。俺がいるから』

寝ていない私にとって、帰っていいぞという申し出は大変ありがたいのだが、健康一筋で齢60歳にして始めて手術に挑む母をもう少し一緒にいてあげたいので、ありがとうといいつつもしゃべっていると、父は言った。


『りゅぢ。帰っていいぞ』

『寝てないだろう。帰らしてやれ』

だんだんと病人である母にキレだした父。これが意味分かんないギレだ。
仕方ないので帰り、手術が終わった際に父から連絡を貰い、母の着替えを持った姉を連れて病院に再度向かった。
病室に入り姉が『着替え持ってきたよ、あと何か必要なものはない?』とほんとキミそれしか言わないね?な事を聞くと父は答えた。

『よし、帰ろう』


帰ろうじゃねぇよ、バカ。
ほんとせわしない人だよ、パパン。
パパンはずっと病院で待ってたから飽きてるかもしれないけど、姉も私も母のお見舞いに来たばっかりなんだよ。
そうは思えど、父の意味分かんないギレのめんどくささを知ってる姉も若干の無視はしつつも『帰るぞ』と何度も言う父に多くは逆らわない。
『何か必要なものはない?』と何度も聞き、何度も『ない』と言われ病室を後にした。

次の日、せわしないバカと同じことばかり聞くバカは置いて、一人でお見舞いに行った。
すると母は言った。

『お父さん、検査とか移動でお医者さんや看護婦さんが代わる度に自分の話してたよ』

父は半年前に脳梗塞で緊急入院した。現在、後遺症がまったく見られないほど元気なんだが、それが自慢でイケナイ。
うんうんと担架で唸ってる母の枕元で、医者や看護婦に必死で自慢してたそうな。

『いやね、私も半年前に脳梗塞で入院しましてね・・・』から始まる自慢話はどういう経緯を辿ったか、最終的には剣道の自慢話になるようだ。
結局、受け持ちが代わる度なので、母はその話を4,5回聞いてたそうな。
『いやね、私も半年前に脳梗塞で・・・』が最終的には『いやね、私も3ヶ月前に・・・』と最近の話に変わったと母は失笑していた。具合悪いときにそんな話聞きたくないよねと。

そしてさらに母は言った。
『こんど来る時、パジャマを持ってきてくれる?お姉ちゃん持ってきたパジャマ、一着しかないし夏物で寒い。なんでこんな薄いの持ってきたんだろう』
役立たずな姉である。さらに母は言った。
『パジャマは一着しかないけど、なぜかバスタオルは3枚もある。お風呂なんて入れないのに・・・』

本当にどちらのバカもバカなだけで役立たずである。
今は無事退院して母は元気です。
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